岡山地方裁判所 昭和23年(行)59号 判決
原告 平木静江 外一名
被告 笠岡税務署長
一、主 文
原告等の訴を却下する。
訴訟費用は原告等の負担とする。
二、請求の趣旨
原告訟訴代理人は、被告が昭和二十三年九月十七日訴外石井益夫に対し爲したる差押物件中原告平木靜江に対し別紙第一目録記載の物件原告石井照海に対し別紙第二目録記載の物件の差押を解放すべし、訴訟費用は被告の負担とす、との判決ならびに仮執行の宣言を求めた。
三、事 実
被告は訴外石井益夫に対し税金の滯納があるとして、昭和二十三年九月十七日原告等の居宅において別紙第一、第二目録記載の物件その他の物件を差押えた。右訴外人と原告等とは居宅を異にし、又世帶も違い、原告平木靜江は世帶主で原告石井照海はその家族であつて、右差押物件中別紙第一目録記載の物件は原告平木靜江の所有物であり、別紙第二目録記載の物件は原告石井照海の所有物である、しからば訴外石井益夫の滯納税金の爲に原告等の所有物を被告から差押えられる理由がない。よつてその解放を求めるため本訴請求に及んだと陳述し、なお本件は被告がなした本件物件に対する前記差押処分は違法にして当然無効であり原告等は各その所有権を不法に侵害せられたので所有権に基き民事訴訟手続によりこれが回復を求めるものであつて行政訴訟ではない。原告等は本件差押処分の無効確認又はその取消を求める意思はなく、又被告を国に訂正することはしないと釈明した。
被告指定代理人は原告等の請求を棄却する、との判決を求め、原告等主張の事実中被告が原告等主張の日時、場所においてその主張の如き物件を差押えたことは認めるが、該物件が原告等の所有物件であることは否認する。被告の爲した右差押の執行は訴外石井益夫に対する租税の滯納として、国税徴收法に基き差押えたものであつて、右差押物件は右訴外人の財産と認定して差押えたものであると述べた。
四、理 由
原告等は本件訴訟は行政事件訴訟特例法による訴訟ではなく、民事訴訟法によるものであるというので職権をもつて本件訴訟の被告である笠岡税務署長馬場茂が民事訴訟による本件訴訟において被告たるの適格を有するものであるか否かについて考えてみるに、凡そ民事訴訟において当事者適格を有する者は原則として訴訟物である権利又は法律関係の存否につき対立せる利害関係実質的帰属者をいうのである。しこうして税務署長は国を代表して租税に関する公法上の行爲をなすものであるがその行爲主体は国であつて行政官廳である税務署長ではない。故に本件訴訟の訴訟物たる権利又は法律関係につき原告等と対立せる利害関係の実質的帰属者は国であつて行政官廳である被告笠岡税務署長馬場茂ではない。即ち被告笠岡税務署長馬場茂は民事訴訟による本件訴訟において被告たるの適格を有するものではない。從つて国を被告となさず行政官廳である笠岡税務署長馬場茂を被告となした原告の本訴は爾余の爭点につき判断するまでもなく既にこの点において不適法であり却下を免れない。
よつて訟訴費用の負担につき民事訴訟法第八十九條、第九十五條を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 中島貢 菅納新太郎 辻川利正)
(目録省略)